突然ですが、禅の問答を集めた碧巌録(へきがんろく)という書物の中に

「一言一句  一機一境  一出一入  一挨一拶」

という言葉があります。


勝手に要約するなら

「言葉を投げかけ、相手の心境をおしはかり、相手の言動に対処しながら、心と心をぶつけ合う」

といったところでしょうか。


この最後の「一挨一拶」が、日常わたしたちが使っている”挨拶”(あいさつ)の語源です。


「挨」には開く、押す、迫る、近づく、という意味があり、
「拶」にも迫る、近づく、切り返すという意味があります。

本来は、禅宗の師が弟子の心の深浅を推察し、弟子が師匠に応答を迫るという、心と心のぶつかり合いを意味する言葉なのです。


一方が言葉を投げかけ、その反応から相手の禅僧としての程度を値踏みするわけですから、双方決して油断はできません。
つまり、「切り込む→切り返す」という、ギリギリのやりとりでこそ、本当の相手を知り本当の自分を知ってもらえるのだというコミュニケーションの真剣さがうかがえます。


さて、ここからが本題。

桐光では挨拶を非常に大事にしています。
それは授業の前後の生徒との挨拶だけではありません。

先生同士の「おはようございます!」に始まって「~校に行ってきます!」「行ってらっしゃい!」
送迎に来られた保護者の方への「ありがとうございます!」
校舎のご近所の皆様への「いつもお世話になります!」
など、数えればきりがありません。

なぜでしょうか。


それは「人に何かを伝える」仕事をしているからです。


授業の前だけ大きな声で挨拶しても、生徒達はそれが作り物だと見抜きます。
きちんと手入れした刀で、常日頃鍛えられた姿勢で切り込んでこない相手に対して、誰がまともに試合をしようと思うでしょうか。
見ている人や通りがかりの人にも笑われてしまいます。


桐光の各校舎には、長い歴史の中で沢山の先生と生徒が切り結んできた熱量が満ちています。

毎回の授業の「一挨一拶」がその歴史の厚さと熱さを増していくのです。

生徒も、私も、「元気なのは最初だけだったね」に決してしないよう、
常に全身全霊で切り結んでいきたいものです。


テスト勉強頑張ってるみんな!来週も楽しみにしてるよ!

鍔迫り合い